600人の耳鼻咽喉科医師対象 アレルギー性疾患に関する全国医師調査

2018年12月07日 [金]

アレルギー疾患の罹患率 スギ(ヒノキ)花粉症は37.2%、通年性アレルギー性鼻炎は26.9%
薬物治療以外の花粉症対策 医師がすすめるのは「マスク」「空気清浄機」「室内のこまめな清掃」「洗濯物の室内干し」

全国の耳鼻咽喉科標榜医師600人を対象に、アレルギー疾患に関する調査を実施した。集計にあたり回答医師のみでの集計(医師集計)と、回答医師とその家族についての回答を含めた全体集計(医師+家族集計)を行っている。性別×年代×エリアの構成比を実態に近づけるため、「総務省平成27年国勢調査」の人口構成比に補正する形でウェイトバック集計※)を実施した。回答医師のみに聴取した項目(診療実態)に関しては、 「厚生労働省平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」の人口構成比に補正する形でウェイトバックエリア(8区分)別にウェイトバック集計を実施した。

※ウェイトバック集計…回収データを、母集団の構成にあわせてデータに重みづけをして集計する方法。母集団と回収データの構成比が異なる際に、属性の抽出率や回収率の違いを補正する場合などに使用される。

調査結果から、以下のことが分かった。

  • 有症率:スギ(ヒノキ)花粉症は全体で37.2%、年代別では「40~49歳」が最も高く53.9%。通年性アレルギー性鼻炎は全体で26.9%、年代別では「30~39歳」が最も高く39.7%
  • 重症度:花粉症全体の67.9%、通年性アレルギー性鼻炎全体の53.1%が中等症以上
  • 治療選択:花粉症では「第2世代抗ヒスタミン薬」、「鼻噴霧用ステロイド薬」、「点眼薬」。通年性アレルギー性鼻炎では「第2世代抗ヒスタミン薬」、「鼻噴霧用ステロイド薬」、「抗ロイコトリエン薬」
  • 実施しているアレルギー性鼻炎対策:「マスク」「空気清浄機」「室内のこまめな清掃」
  • 舌下免疫療法の実施経験ある医師:スギ舌下免疫療法45.6%、ダニ舌下免疫療法34.9%
    スギ舌下免疫療法で6.5%、ダニ舌下免疫療法で6.1%の患者が治療を中断
  • 舌下免疫療法:「有効性」「安全性」「QOLの改善性」「患者さんの満足度」に高評価

今回の調査について、三重県・ゆたクリニックの湯田厚司院長(日本耳鼻咽喉科学会専門医、日本アレルギー学会専門医・代議員)は以下のようにコメントした。
「アレルギー疾患の罹患・治療状況の変遷を比較する上で、非常に有意義な調査だ。スギ(ヒノキ)花粉症の罹患率は、以前に行われた他の調査と比較してもさらに上昇しており、また、詳細分析の結果、70代以上の高齢者の花粉症罹患率も20%を超えるなど、専門医からみても気づきの多い調査結果となった。さらに、新たな治療選択肢として登場した、舌下免疫療法についても医師がどこを評価しているかが明らかになるなど、多くの示唆に富んだ調査といえる」

調査報告書はhttp://www.qlife.co.jp/news/181226qlife_research.pdfからもダウンロードできる。

実施概要

(1) 調査対象:耳鼻咽喉科標榜医師
(2) 有効回答数:600名
(3) 調査方法:インターネット調査
(4) 調査時期:2018/10/4~2018/11/1

調査項目

医師本人のアレルギー疾患の罹患状況について

  • 医師本人が罹患したアレルギー疾患の種類、初発時期、重症度
  • 医師本人のアレルギー性鼻炎治療に用いる治療薬/治療内容について
  • 症状悪化を防ぐために行っている環境調整、民間療法について

医師と一親等以内(両親、子、配偶者)のアレルギー疾患の罹患状況について

  • 罹患したアレルギー疾患の種類、初発時期、重症度
  • 治療薬/治療内容について

スギ花粉症およびダニアレルギー性鼻炎の診療状況について

  • 直近1年間の診療患者数
  • 舌下免疫療法の実施・検討状況
  • 舌下免疫療法を実施している患者像(年齢・継続状況)
  • 舌下免疫療法に対する医師評価(有効性、安全性、治療の継続性、QOLの改善性、経済性、患者さんの満足度)

調査結果一例

アレルギー性鼻炎有症率 <医師+医師家族>(複数回答)

アレルギー性鼻炎全体の有症率は51.1%だった。スギ(ヒノキ)花粉症の有症率は37.2%、通年性アレルギー性鼻炎の有症率は26.9%だった。

年代別 アレルギー性鼻炎有症率 <医師+医師家族>

スギ(ヒノキ)花粉症の年代別有症率は「40~49歳」が最も高く53.9%、次いで「50~59歳」が46.6%、「30~39歳」が46.1%となった。また、「70歳以上」も20.5%が何らかの症状を有していた。
スギ(ヒノキ)以外の花粉症の年代別有症率は「40~49歳」が最も高く25.5%、次いで「50~59歳」が24.3%、「30~39歳」が22.6%となった。
通年性アレルギー性鼻炎の有症率は10~59歳の幅広い年代で総じて高く、年代別では「30~39歳」が最も高く39.7%、次いで「50~59歳」が36.4%、「20~29歳」が35.2%であった。



アレルギー性鼻炎 重症度 <医師+医師家族>

花粉症(スギ(ヒノキ)花粉症+スギ(ヒノキ)以外の花粉症の合計)では、くしゃみ・鼻漏型の中等症以上が48.7%、鼻閉型または鼻閉を主とする充全型の中等症以上が19.2%となり、全体では67.9%が中等症以上だった。
通年性アレルギー性鼻炎では、くしゃみ・鼻漏型の中等症以上が32.9%、鼻閉型または鼻閉を主とする充全型の中等症以上が20.2%となり、全体では53.1%が中等症以上だった。

アレルギー性鼻炎 発症時期 <医師+医師家族>

調査を行った2018年に発症したのは、スギ(ヒノキ)花粉症患者全体の3.3%、スギ(ヒノキ)以外の花粉症患者全体の3.5%、通年性アレルギー性鼻炎患者全体の1.4%だった。

アレルギー性鼻炎 治療選択 <医師+医師家族>(複数回答)

花粉症(スギ(ヒノキ)花粉症+スギ(ヒノキ)以外の花粉症の合計)では、「第2世代抗ヒスタミン薬」が最も多く70.8%、次いで「鼻噴霧用ステロイド薬」49.0%、「点眼薬(抗ヒスタミン薬、ケミカルメディエーター遊離抑制薬、ステロイド薬)」24.8%となった。また、「舌下免疫療法」は2.9%だった。
通年性アレルギー性鼻炎では、「第2世代抗ヒスタミン薬」が最も多く59.7%、次いで「鼻噴霧用ステロイド薬」38.2%、「抗ロイコトリエン薬」13.1%となった。また、「舌下免疫療法」は1.8%だった。

※抗ヒスタミン薬、ケミカルメディエーター遊離抑制薬、ステロイド薬

実施しているアレルギー性鼻炎対策 <医師のみ>(複数回答)

花粉症(スギ(ヒノキ)花粉症+スギ(ヒノキ)以外の花粉症の合計)に罹患している医師では、「マスク」が最も多く57.4%、次いで「空気清浄機」36.0%、「室内のこまめな清掃」22.9%、「洗濯物の室内干し」22.8%となった。
通年性アレルギー性鼻炎に罹患している医師では、「室内のこまめな清掃」が最も多く31.0%、次いで「マスク」28.4%、「空気清浄機」28.2%、「こまめに布団を干す、もしくは布団乾燥機をかける」17.9%であった。

エリア別 患者に対する舌下免疫療法 医師の実施割合 <医師のみ>

スギ舌下免疫療法では45.6%の医師が「実施したことがある」と回答した。
ダニ舌下免疫療法では34.9%の医師が「実施したことがある」と回答した。

舌下免疫療法を実施している患者の年齢 <舌下免疫療法実施医師のみ>(複数回答)

スギ舌下免疫療法実施では、「30~39歳」が最も多く73.1%。次いで、「40~49歳」68.0%、「20~29歳」57.5%、「50~59歳」52.9%となった。
ダニ舌下免疫療法実施では、「30~39歳」が最も多く64.7%。次いで、「10~19歳」60.0%、「20~29歳」59.2%、「40~49歳」53.9%となった。

舌下免疫療法の継続状況 <舌下免疫療法実施医師のみ>

スギ舌下免疫療法実施では、14.7%が3年以上治療を継続していた。一方、6.5%が治療を中断していた。ダニ舌下免疫療法実施では、6.2%が3年以上治療を継続していた。一方、6.1%が治療を中断していた。

舌下免疫療法の評価 <舌下免疫療法実施医師のみ>

「評価している」「やや評価している」と回答した割合の合計は、スギ舌下免疫療法では、「有効性」が最も多く87.4%。次いで、「安全性」85.6%、「QOLの改善性」82.8%、「患者さんの満足度」72.8%となった。ダニ舌下免疫療法では、「有効性」が最も多く76.8%。次いで、「QOLの改善性」73.4%、「安全性」68.6%、「患者さんの満足度」67.0%となった。

本調査についての問い合わせ先

エムスリー株式会社 ビジネスインテリジェンス&リサーチカンパニー
bir_toiawase@m3.com

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